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JEFF ROWLAND D.G.「Criterion」 [プリアンプ]

Criterion.jpg

年末から年始にかけて、JEFF ROWLAND D.G.の「Criterion」を自宅試聴させて頂きました。

「Criterion」は2筐体に分かれており、上側が電源/バッテリー/ディスプレイ/音量・入力等のコントロール系統が入った電源部、下側は回路基盤が入った増幅部となっていて、音声信号が通る部分とそれ以外の部分とがスッパリと切り分けられています。ボディがアルミの削り出しのため、見た目よりかなり重いのですが、2筐体のため1台ずつはそれほど重くなく、設置はわりと容易です。たまに腰が痛くなる私にとっては優しいアンプと言えます。
電源部の底面と増幅部の上面に小さな窪みが4つずつあり、そこにデルリンという樹脂素材のボールを入れて、上下で挟みこむことで安定した設置が可能になっています。上下の2筐体は厚みは違いますが、幅と奥行きが揃えられており、また前述のボールによってピッタリと揃えて設置できるので、見た目はかなりすっきりしています。多くの電源別体の機器が、なんだかよくわからない怪しい箱としか見えない電源部を抱えているのとは対照的です。
ちなみに電源部から増幅部へは、左右独立の専用ケーブルでDC電源が供給されます。

ボディの仕上げは他のJEFF ROWLAND D.G.の製品同様、前面はピカピカに磨き込まれたシルバーのパネル風で、後ろ側は黒のアルマイト。全体に付けられた波状のテクスチャも最近のJEFF ROWLAND D.G.製品と同様です。
今回は、長い期間お借りすることができましたので、現使用のプリアンプと交換しラック内にずっと収めていたのですが、角Rが大きめの優しさを感じるボディデザインをずっと見ていると、どこか北欧のデザインをイメージさせ、拙宅のリビングに既に馴染んでいるようでした。

鳴らし始めて一番驚いたのは、音の背景がものすごく静かなこと。S/Nの良さは噂通りで、この静けさは特筆すべきものがあります。何も無い空間に音が吸い込まれるように消えて行く感じがします。
それから、余韻の再現力が素晴らしい。余韻が長く、音の周りにスーっと広がって行くのが見えるようです。
また、左右のセパレーションがかなり良いみたいで、打ち込み系の曲でパンニング等の細かい処理が行われているのが手に取るようにわかります。こんな経験は初めてで、パワーをモノラルに変えた時と同じくらいの効果を感じました。

現使用の同じくJEFF ROWLAND D.G.の「Capri」と比べると、地味目でシックな音調に聴こえますが、音数は確実に増えています。パッと聴きで解像度が高いという感じはせず、印象は静かなのだけれども、よく聴くと実はいろんな音が鳴っていることに気づきます。尖ったところがなく、非常に聴きやすい音です。そのため、迫力不足と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、決して柔らか過ぎたり美音過ぎるということはなく、素直に音が出ている感じがします。「Criterion」と比べてみて「Capri」は実はかなり甘く柔らかい音調だったということがわかりました。
ただ、あまりに静的な雰囲気になって聴きやすくなるので、何かを失っている感はあります。しかし、それでもいいやと思えるくらいの魅力を持っていると思います。

肝心のバッテリー駆動とAC駆動の音の違いですが、一番の違いは余韻にあります。
「Criterion」は、リモコンの左右キーでバッテリー ←→ ACの切り替えが簡単にできますので、曲を聴きながら違いを試す事が可能です。音調は全く変わらないので、切り替えた瞬間は?と思うのですが、バッテリー駆動の方がなんだか気持ちがいい。そこで良く聴いてみると余韻の長さが違うことに気がつきます。
ただ、AC駆動の音がダメかというとそういうわけではなく、AC駆動でも十分なクオリティです。また、AC駆動の方が若干明るめで元気な音になります。そのため、曲によってはAC駆動で聴いた方が良く聴こえることもありそうです。

バッテリーの駆動時間ですが、デモ機では4時間程度でした。4時間程度なら実使用上は十分な時間だと思います。ただ、充電時間は予想以上に長かったです。STEREO SOUNDのNo.170に掲載されているレビュー記事によると16時間ということですが、それに近い時間が必要なようでした。
そこで使い勝手上、困ったことに気がつきました。私は音楽を聴かない時は機器の電源を切るようにしています。「Criterion」は背面に電源SWがあるのですが、電源を切ってしまうとバッテリーへの充電は行われないのです。つまり、音楽を聞き終わった後、バッテリーが充電されるまでは電源を入れっぱなしにしておく必要があるということ。
そこである考えが生まれました。これまでの使い方を続けるのであれば、どうせバッテリー駆動で聴けるケースは少ないのだから、下位モデルの「Corus」で良いのではないか?「Corus」にしておけば100万円も安いですし・・・。次は「Corus」を借りてみようかなと。しかし、このアイデアは返却日前日の試聴で、もろくも打ち砕かれました。

年明けの週末、返却日が近づいたので再度じっくりと試聴をすることにしました。試聴ソースは、大貫妙子 & 坂本龍一の「UTAU」。正月休みに聴こうと年末に注文したのに、既に年内の発送が終了していたようで年明けになってから届きました。orz ピアノとボーカルだけのシンプルな演奏なので、違いがよくわかるはずです。
やられました・・・。このソースだとバッテリー駆動とAC駆動の違いは歴然でした。AC駆動からバッテリー駆動に切り替えると、音の背景がスッと奥に下がるのがわかります。ボーカルの奥行きが増し、1つ1つの音の周辺に余韻がふわっと広がります。そして、まるで水が砂に吸い込まれるように、音がスーと沈み込むように消えて行き、音が消える瞬間が見えるようです。これに比べるとAC駆動の音は、平面的でどこか乾いた感じがします。音が明るめになり、滲みを感じます。
これを聴いてしまうと、もう後戻りはできません。この音で聴くためにがんばって充電しますよという気持ちになってしまいます。(もちろん、貯金もがんばる必要あり)
それに理屈抜きで気持ちいいんですよね、バッテリー駆動の音は・・・。

「KX-R」と「Criterion」は全く違う方向性で、どちらが良いかは正直悩みます。リラックスして聴けるのは「Criterion」の方かと思いますし、「Capri」の延長線上にある音なので、違和感を全く感じません。実は、JEFF ROWLANDの音が好きなのかもしれませんね。

ずいぶんと長文になってしまい、申しわけありません。
このクラスになるとすぐには買えませんので、急ぐ事はないかと思い、実は追加でもう1機種、試聴を計画しています。さて何でしょう?
まだ、いつ借りれるかも全然決まっていませんので、楽しみにしてお待ちください。
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こおろぎ

レビュー読み応えありました。
UTAUは自分も愛聴しています。特に「夏色の服」が気に入り、オリジナルの入ったアルバムClicheを入手しました。雰囲気が全く違ってびっくりでした。

by こおろぎ (2011-01-23 20:13) 

村井裕弥

このレポートを拝読し、ようやく年が明けたような気がしました。
バッテリー駆動、おそるべし!

あと1機種も楽しみにしております。
by 村井裕弥 (2011-01-23 21:43) 

vitamin_engine

>>こおろぎさん

昨日、慌てて書いたので、今日読んでみると誤字や変な言葉遣いが散見され、文章も硬いですね。いやあ、お恥ずかしい。少しだけ修正しておきました。
「Cliche」の頃の大貫妙子は以前からとても好きなのですが、「カイエ」が特に好きです。機会があったら聴いてみてください。

by vitamin_engine (2011-01-24 22:26) 

vitamin_engine

>>村井さん

大変お待たせいたしました。
バッテリー駆動のアンプをじっくり聴くのは初めてだったのですが、想像以上に違うものですね。いろんな課題がありながらも、バッテリーを採用するエンジニアの気持ちが少しわかりました。
次の機種は、2月下旬くらいに借りることができそうです。

by vitamin_engine (2011-01-24 22:35) 

ファウ

遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。

お久しぶりです。
相変わらずの表現力には脱帽です(汗)。
Criterion良さそうですね。私はてっきりKX-Rを選ぶのかなと思っておりましたが・・。

実はCorusを試聴したいな~と思っておりましたが、バッテリー駆動との違いを考えるとちょっと考えてしまいますね。でもModel 625とセットで聴いてみたいです。

もう1機種の試聴ですか・・。意表をついてMomentum Preampとか(笑)。
楽しみにしております。それではまた。
by ファウ (2011-01-28 23:40) 

vitamin_engine

こんにちは、ファウさん。
お久しぶりです。

私も「KX-R」と思っていたのですが、「Capri」と比較試聴した際に、全てにおいて「KX-R」の方が良いと思えなかったんですよね。「Capri」にもいいところがあると思いました。そのあたりが、チャールズ・ハンセン氏の目指す音と、私の目指す音との差分なのかもしれません。

「Corus」は、聴いていないのですが良さそうな気がします。「Criterion」のバッテリーとACとで聴感上のS/Nの違いはほとんど感じないんですよ。弱音の再現力が違うのだから、もちろん差があるのでしょうが、ACでも十分に静かなのです。
「Model 625」は、ちゃんと聴けていないのですが、Ice Powerとは違う傾向のように思いました。個人的には「Model 925」がどんなかたちで出てくるか楽しみです。

もう1機種は、きわめて真っ当な選択なのですが、私の好みからするとかなり意外。なので、全然気に入らないかもしれません(笑)

by vitamin_engine (2011-01-30 16:42) 

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